浴衣はお祭りや花火大会など夏に行われるイベントのときに着るもの、というイメージが強いです。今は浴衣の種類も増えていて、リーズナブルな価格のものや、簡単に結べる帯なども登場しているから、以前より気軽に取り入れられるようになっています。あまり浴衣のことをよく知らなくても、なんとなく和装ということはわかります。
着物と似ているけどどこが違うのか? 浴衣と着物の違いを紹介します。
実は浴衣は着物の一種?
浴衣を和装とするなら、着物と同じと考えることができます。でも着付け方やシチュエーションは違っています。
衣類をカテゴリ分けするとしたら、大まかなカテゴリとして分けるなら、浴衣は着物の一種とされます。そこからさらに細かく分類すると、違いもいくつか見えて来るのです。浴衣は着物の一種という前提で、細かい違いを見ていきましょう。
浴衣は夏に着る薄手の着物
浴衣は着物の一種とされていますが、着物との違いはいくつかあります。
一番わかりやすい違いを挙げるとするなら、「浴衣は夏に着る薄手の着物」というところでしょう。見た目には着物も浴衣もほぼ同じ形をしています。しかし2つを並べて比較した場合、生地の違いが見た目にもはっきりとわかります。
着物は少し厚みがありしっかりとした生地で、透けるようなことはありません。
一方の浴衣は、さらっとした手触りで羽織ったときもふんわりと軽く、透け感があります。透け感のない生地もありますが、光を当てると透けるので生地の違いはあっても着物より薄くできています。浴衣は夏に着るので、透けるくらいがちょうどいいのです。通気性にも優れているから、暑い夏でも涼しく着られます。
和装になるとイメージしにくいなら、洋服に置き換えると案外わかりやすいかもしれません。冬物と夏物では生地の素材が厚みが違いますよね?浴衣と着物も基本はこれと同じです。
着物と浴衣の形状は同じ
着物と浴衣を2つ並べて比較したとき、形状はほぼ同じであることがわかります。これも浴衣を着物の一種とする理由の一つです。
着付けの仕方は多少違いはあるものの、袖を通し衿を合わせ帯を締めるという着方も基本的には同じです。着物にも浴衣にも生地の違いはいくつかありますが、どれも形状はほとんど変わりません。
昔の浴衣の使用方法は寝巻、現代は夏の遊び着
昔は今のように洋服を着る習慣がありませんでしたから、普段は着物をしていました。しかし寝るときに着物を着たままでは寝られませんので、浴衣をパジャマ代わりにしていました。
平安時代は貴族だけが浴衣を使っていましたが、江戸時代になり銭湯が一般的になると、庶民の間にも浴衣を着る習慣が根付いていきます。昔は寝巻きとして使われていたこともあって、浴衣は着物の一種でもカジュアルです。
着物はフォーマルな装いとされるので、形状は同じでも着物の方が格が高いということになります。
浴衣はカジュアル感覚だから気軽に着られるのはメリットです。現代は夏の遊び着として着られることが多いです。着物のようにフォーマルではないから、帯や履物もドレスコードはなくある程度なら自由にアレンジすることもできます。浴衣にスニーカーやサンダルを合わせたり、浴衣をリメイクしてドレスのようにしたりできるのも、カジュアルだからこそです。
浴衣は着物と何が違う?
浴衣を着物は、カジュアルかフォーマルかの違いの他にもいくつかはっきりとした違いがあります。その違いについてもう少し詳しく見ていきましょう。
着用時期や場面
浴衣と着物は、着上時期や着用する場面にも違いがあります。
浴衣は夏に限定されます。(一部では今でも寝巻きとして浴衣を使う人はいますが、この場合は外に着ていくことはないので除きます。)
殆どの場合浴衣を着るのは、夏祭りや花火大会などのイベントです。友達同士でお祭りや花火大会に行くなら、浴衣を着ていくだけでも気分が変わりますし夏っぽい雰囲気を味わえます。
着物は夏に着ることもありますが、着物の下には肌襦袢や長襦袢を着て、足袋を履くので夏用の薄手の着物でもかなり暑い思いをします。さらに着物を着る場面は、結婚式やパーティーのようなお祝いの席や、初詣や成人式、不祝儀でも着物を正装として着用することがあります。冠婚葬祭でも着物をフォーマルウエアとして選ぶことは多いですし、お祝いの席に出席する際も正装として着ていけます。
公式な場面に浴衣は着て行けませんが、着物なら公式な場面にも通用します。
素材や生地の違い
浴衣と着物では、生地も違ってきます。
浴衣に使われるのは綿ですが、麻との混合生地もあります。最近はポリエステル製のものも多く販売されるようになっています。ポリエステル製の浴衣は吸水性と速乾性に優れているので着心地がいいこと、生地が丈夫で洗濯しても型くずれしにくいこと、価格が安価になるなどメリットもたくさんあります。発色がいいので、デザインやカラーバリエーションが豊富です。
着物に使われるのは絹・木綿・ウールなどです。生地は浴衣に比べてしっかりとしていて裏地もつくので透け感がありません。見た目にも上質な雰囲気が伝わってきます。色や柄も浴衣とは違い全体的に落ち着いて上品なデザインです。
安価な着物だと化学繊維を使ったものもありますが、着物の場合は生地に合わせて帯も変えるので、生地によってふさわしい帯を選ぶのがポイントです。
下着を着るかどうか
下着も浴衣を着物では大きく違っています。
浴衣を着るときにも和装下着を付けると透けないし、着姿が美しく見えるので和装下着を使うのがおすすめです。浴衣用の肌着などもありますので、透けないようにしたいときは、肌襦袢を着ます。それ以外の場合は上をキャミソールやスポーツブラで、下はステテコでも代用できます。浴衣は生地が薄く涼しいのがいいのだから、下着を着たら暑いという理由で普通のブラジャーやショーツで間に合わせようとすることもあります。しかしこれだと下着が透けてしまいますし、体のラインが出てしまい綺麗に見えません。
着物は基本的に、肌襦袢と裾除けと長襦袢を着てから着ます。浴衣でも透けないように肌襦袢を着て対策することはできますが、長襦袢は暑いので着ません。長襦袢は衿が見えるのもポイントです。
浴衣でも和装下着を着用しますが、長襦袢は着ませんし肌襦袢や和装ブラジャーは浴衣を着たとき見えないようにデザインされています。
着付け方法が異なる
浴衣と着物は着付け方にも違いがあります。
衿を合わせる際は浴衣も着物も「右前」にします。合わせ方は同じですが、下に着るものも違うので着物は着付けにも時間がかかります。
下着はそれほど難しくありませんが、着物も浴衣も丈を合わせるためのおはしょりをします。ここは共通していますし、やり方もほぼ同じです。
浴衣は長襦袢を着ないので、羽織ってから後ろ衿を少し下げ気味にしますが、着物は長襦袢に合わせます。羽織って腰紐を結ぶのもほぼ同じですが、帯の結び方は違います。
浴衣に使う帯は幅も狭く長さも短いですが、着物に使う帯は幅が広く長さもあります。帯の結び方も浴衣と着物では全然違います。
着物は生地によって帯も変えますし、結び方なども違います。種類も浴衣より多く、帯を結ぶときに必要な小物もいくつかあります。最近は浴衣でもアクセサリー感覚で帯締めを使うことがありますが、着物には必須です。
着付けにかかる手間も時間も、浴衣と着物ではかなり変わってきます。
振袖も着物の一種
着物にもいくつか種類があります。 着物の中でもカジュアル感覚の付け下げ、ちょっとしたお出かけなどに着る色無地や訪問着、冠婚葬祭のときは家紋が入った黒留袖や色留袖を選びます。
もうひとつ、振袖も着物の一種として数えられます。振袖は成人式に着るというイメージですが、振袖を着るのは未婚の女性だけです。 成人式にも着られますし、結婚式やパーティーなどでも未婚なら着ていけます。
訪問着は既婚の女性の正装、振袖は未婚の女性の正装という見方もできます。結婚式で着物を着る場合は、白無垢や売り打掛を着ます。 これも振袖になっているので、袖が長く豪華に見えます。
結婚式というとウエディングドレスのイメージですが、最近は和装も人気があるので貸衣装などでも和装の種類は増えています。 最初にウエディングドレスを着て、お色直しで本振袖を着るというパターンも人気となっています。
振袖は着物のうち袖の長さが長いもの
振袖は袖が長いのが特徴ですが、実は振袖にも種類があって種類ごとに着る場面は異なります。
振袖の種類は「大振袖・中振袖・小振袖」となっていて、少しずつ袖の長さが違います。 大振袖は約114cm、中振袖は約100cm、小振袖は約85cmです。
大振袖を着るのは格式の高い場所となるので、自分の結婚式に着ることが多いです。 中振袖は成人式やゲストとして結婚式に出席するときに着用します。
小振袖は袴と合わせて卒業式のときに着るのが一般的です。いずれも未婚の女性が着る着物です。 自分の結婚式に着る場合、先に入籍を済ませていて既婚者になっていても、結婚式のときには振り袖を着てもいいことになっています。 ただし敷が終わった後は、既婚者となるので振りは着ません。
振袖はお祝いごとで着ることが多いため、柄が慶事です。 既婚者になってから振袖も袖を切って着るということもできますが、柄によっては袖を切っても着ていける場所が限られてしまうことがあります。 柄によっては袖を着ることでバランスが悪くなる可能性もあるので、選ぶときは先のことも考えて選ぶといいかもしれません。
つまり浴衣も振袖も「着物」
浴衣を着物の違いを見てきましたが、大まかに分類するなら浴衣も振袖も着物のジャンルに含まれます。 細かい分類になると、カテゴリは変わりますが皆着物という認識でいいのではないでしょうか。
まとめ
一般的には、浴衣も着物も着る機会は限られますので違いがあってもそれがよくわかりません。 浴衣を着るけど着物は着ないという人も、違いを知っておけば何かのときに役に立つことがあるかもれません。